Part2【Event report】N-Radi#3「NRIのAIコンサルって何するの?-AIと共創する未来-」プロジェクト編
N-Radi#3 プロジェクト編をお届けします!
NRIでは定期的に人材紹介会社向けのオンライントークイベント「N-Radi(エヌラジ)」を開催しています。そもそもこのイベントは、転職希望者に対してNRIの魅力をNRIに代わって伝えてくれる人材紹介会社のエージェントのみなさまに、NRIの仕事や社員の魅力をより身近に感じ、深く理解いただくことを目指して企画しています。(N-Radiというイベント名にはラジオ感覚で気軽に楽しんでもらいたいという思いが込められています。)
第三回は「NRIのAIコンサルって何するの?-AIと共創する未来-」と題して、コンサルティング事業本部AIコンサルティング部の河邊俊輔(かわべしゅんすけ)さんに登壇いただきました。 9日に公開したパート1のキャリア編に続いて、パート2ではAIコンサルティングとは実際にどんなことをしているのか、お話いただきました。その中から一部抜粋し、プロジェクト編としてレポートをお届けします。
NRIが提供する4つのレイヤーでのサービスメニュー
(河邉さん)上記の図は当社の「AIコンサルティング」サービスのメニューなのですが、大きく4つのレイヤーで構成されています。経営レベルの判断なのか。事業レベルのことなのか、社員の業務レベルの話をしているのか、システムの基盤あるいはルールの基盤なのか、といった階層に分かれており、NRIの強みはこの経営から基盤まで一気通貫でサービスを提供することによって経営改革を実現できるところにあります。
経営のレイヤーでいうとCoE(センターオブエクセレンス)と言いますが、経営においてAIをどう活用するか、例えばナレッジをためていくのか、人材を育成していくのか、といった大きな話がテーマとなります。
次に事業レイヤーで言うと、事業戦略立案に関わる部分ですが、今はAIを活用して既存事業をどう変えていくのか、であったり、どういう新しい事業のチャンスがあるんだろうか?といったところがお客さまの注目度が高いところになるので、実際に戦略を立ててビジネスを変えていくというケースがありますが、もう少し進むと業界横断のエコシステムの推進などもあります。これは企業ごとにそれぞれ事業戦略などの策定をやっていくうちに、企業間で課題が重なる部分が出てくる時があります。そういったときには企業単位ではなく「社会」という風に捉え直して、業界としてAIを活用することでどう新しい仕組みや組織を作っていくか、みたいな話をしたりします。
業務レイヤーになってくると、それぞれの業務に対してAIを活用していくと、どう変わっていくんだろうか、というユースケースになります。個別の業務におけるAI活用の話になることもありますし、それぞれが連なった時に、会社全体の業務システムがどう改革されるべきなのか、という日々の業務の変革に関わる部分になることもあります。
最後に基盤整備に関わる部分です。これは重要なのですが、AI倫理などと言われたりもしていますが、会社として誤ったAIの使い方をしないために、ガバナンスをどう整備するのか、といった話や、皆がAIをより使えるようにするにはどういう会社内のシステムが必要なのか、というところのアーキテクチャ設計や整備があります。
あとはデータマネジメントですね。AIは基本的には何かデータをインプットして、それに対してアウトプットするものですが、そもそも”いいデータ”をインプットするということが非常に重要になってくるので、その前提として会社の”いいデータ”をどう管理していくのかが重要になります。
事業レイヤーのご相談は多いが・・・
このサービスメニューの中で特にどういったご相談がお客さまから多いのか、についてですが、やはり事業レイヤーのご相談をいただくことが多いです。
これはそもそもNRIが事業戦略の伴走に強い、というのもあるのですが、AIを使ってどういった事業をやっていくのか、それをどのようにデザインすれば実際に動いていくのか、といった内容は多いですね。ただ、特に生成AIの登場以降になるのですが、これだけ急激な変化を目の当たりにすると、会社としてどう活用していくのか中長期でちゃんと考えなきゃいけないね、といった視点でのご相談や、もっと実務的なテーマとして、実際にAIを使える人材を内製していくための研修とかをやったりもします。
あとは事業を作るとなると結果的にデータ基盤の整備が必要であることが分かったり、ということもあるので、事業を起点に経営側にも基盤側にも波及していくことが多いですね。
PoCで終わりがち??
AIによる事業価値創出のプロセスについては大半の管理職や経営層の方がその重要性は理解されているし、実際に使い始めたりしています。でも実はその中からちゃんと効果が出ました、というのはめちゃくちゃ少ないです。せっかく導入したところで変化がなかったり、改善率も10%未満だよね、といったことが多い。ですので「AIはなんか使えるぞ」といったところから、PoC(実証実験)祭りになるのですが、実際やってみると効果はいまいちだったね、というパターンが多くてPoC疲れになり始めているのが実情です。
で、なぜこうなってしまうのかを考えたときに、AIとの関わり方が重要である、ということに至ります。人とAIの関わり方、AIの活用範囲は、AIの予測精度に応じて、人による判断が効果的であるもの、AIと人間の協業が効果的であるもの、AIに判断を任せてしまった方が良いもの、という3つのステップに分かれ、各ステップごとに適切な業務活用の進め方が異なります。
その前提とした時に今の課題はAIで解決できるのか、というところを考えることが重要ですし、私たちもまずお客さまにこういう考え方を持ってくださいね、とお話ししたりします。
こうしたAIとの関わり方の感覚がなんとなくみんな分かり始めてきた、というのが昨今のAI事情ですね。
精度に対する期待とのギャップ
実際のプロジェクトでも目標設計が曖昧だと多くの企業が陥ってしまうのが、「精度が上がらない、精度が上がらない」という罠です。先日も、とあるAIが正答率95%の精度まで行ったが目標の99%を達成できず、AI導入を断念したというニュースがありました。人間でも一定の誤りがあるものに対して精度を追っていくと際限が無くなってしまう、という事例だと思いましたが、それは「AIならなんでもできるんでしょ、100%の正答率だっていけるんでしょ」という期待する価値と実態にギャップがあるから起こってしまいます。 ですのでAIに対して求める価値は精度ではなくて、AIによるサポートによって人間がより正しく判断できるようになることである、というものであったり、価値は何なのか、ということをお客さまとしっかり話すことから始めることを重視しています。
プロジェクトを支える3つの役割
どんな人材が実際にプロジェクトに関わっているのか、ということですが、AIコンサルティング部にはいろんな人がいるのですが、大きく3つに分かれます。
まずコンサルタントですね。これはいわゆる旧来型と言いますか、通常通りお客さまとコミュニケーションを取って戦略を考えたりAIの適用を考えたりする業務が中心となります。技術的に無知なわけではないのですがコーディングや開発はしません。
次にデータサイエンティストです。生成AIのエンジニアはNRIの中には多くいますが、AIコンサルティング部の中にもいるというのが特徴ですね。部内にこの役割を担える人がいるので、コンサルタントがヒアリングしてきた要件に沿って実際に生成AIの動くものを作ってみる、ということができます。
そして非常に大事なのがコンサルタントとデータサイエンティストをつなぐトランスレーターです。従来のシステム開発などでもあったと思いますが、お客さまのフロントに立つ人間が、無茶な要件を聞いてきてしまい開発側の怒りを買ってしまったり、出来上がったものがお客さまの求める要件と違う、なんてことが起き得ます。これらを防ぐために、このトランスレーターが生成AIで何ができるのか、ということをキャッチアップし、鮮度の高いテクノロジーの知見を持ってコンサルタントと一緒にお客さまと要件を詰める、ということをします。ですので、このトランスレーターという人材はとても大事ですし、今後もっと必要になるだろうと思います。
AIコンサル部にそれぞれの役割を担う人材はいますが、必要に応じてお客様の業界に詳しいコンサルタントを他部からアサインしたり、開発側のエンジニアをシステム部門からアサインしたり、ということも結構多いです。いずれにしても今後トランスレーターの重要性はますます上がっていくと思いますね。
簡単ではありますが以上がAIコンサルティングを取り巻くNRIの現状となります。
当日はエージェントの皆様に向けて、さらに詳細な事例なども共有しました。
劇的なスピードで生成AI関連の技術が進化する中、多くの企業がその活用を模索していますが、河邊さんのお話を通じて、そこには様々な落とし穴があるということが分かりました。そうした落とし穴にはまらないようナビゲートしていくAIコンサルタントの業務の一端に触れ、大変学びのあるイベントとなりました。
河邊さんが所属するコンサルティング事業本部の求人はこちら
writer:串間 淳
2007年より約5年間、販売促進の代理店で営業を務め、その後、大手人材サービス会社へ転職。約10年間、IT・コンサル業界のキャリア採用支援に関わったのち、2023年1月より野村総合研究所人事部のキャリア採用担当としてジョイン。採用ブランディングを主に担当しています。